「養豚って何?」
「どんな仕事なの?」
「私にもできるかな?」
養豚に興味をお持ちの方は、こんな風にお考えかもしれません。
養豚とは、食肉となる豚の飼育に関わる仕事全般。
私たちが口にする豚肉は、養豚農家によって生産されているんです。
ひとくちに養豚農家といっても、2つの経営スタイルにわかれます。
豚の繁殖や改良を目的に、繁殖用の雄と雌の豚を飼育する「繁殖(種豚)経営」。
子豚を食用豚まで飼育する「肥育豚経営」と、役割によって作業内容が異なります。
2種類の養豚農家の仕事があってこそ、新鮮でおいしい豚肉が食卓に並ぶのです。
このページでは「繁殖経営」と「肥育経営」それぞれの養豚農家の仕事内容や、作業スケジュールを詳しくご紹介します。
どんな人が養豚農家に向いているのかもあわせてお伝えしますので、興味のある方、やってみたい方は、ぜひ参考にしてくださいね。
養豚の生産物例 5品種の掛け合わせでおいしい豚肉ができる
冒頭でお伝えしたように、養豚は食用となる豚を飼育すること。
「繁殖経営」と「肥育経営」の農家によって、豚肉は生産されています。
私たちがとんかつや豚汁として食べている豚は、主に5種類の豚を掛け合わせた品種。
よく耳にする「三元豚」は、3品種の交配によって生まれる豚です。
ここでは、日本で飼育されている5品種を紹介します。
➀ランドレース
大型で、毛色は白。
繁殖能力が高く、発育も早いのが特徴です。
バラ肉が多く取れ、国内の主要品種として多くの養豚農家で飼育されています。
②ヨークシャー
中~大型で、白毛。
赤身と脂身の割合がよく、加工に適しています。
③デュロック
中型で、毛色は褐色。
成長が早く、きれいな霜降りが入っているのが特徴です。
④バークシャー
中型の黒豚。
飼育期間が長く、肉の量が少ないというデメリットはありますが、きめの細かい良質な肉が取れます。
⑤ハンプシャー
大型に近く、毛色は主に黒。
肩から胸や前足にかけて、帯状に白い毛が入っているのが特徴です。
高付加価値の部位の比率が多く、産肉性に優れています。
養豚農家の育成スケジュール 繁殖農家と肥育農家で異なる
養豚の育成スケジュールは、「繁殖経営」と「肥育経営」で異なります。
養豚農家は動物を相手にする仕事なので、基本的には年中無休。
休日は、シフト制で順番に取得する場合が多いです。
養豚農家の働き方は、豚の育成サイクルに大きく関わります。
経営スタイル別に、養豚のおおまかな育成スケジュールを確認してみましょう。
繁殖経営
繁殖豚は生後8か月頃に交配させ、子豚を出産させます。
その後も1年に2回ほど交配・出産を行い、3年で6回の出産を目安に繁殖豚の役目を終えるのが一般的です。
肥育経営
体重が約40~70kgの豚は育成豚舎で、約70~110kg前後の豚は肥育豚舎で飼育します。
生後6~7か月を経過した豚から、出荷していくのが一般的です。
養豚農家の1日の流れ 豚の育成に最適な環境を整える
飼育スケジュールがわかったら、次は養豚農家の1日の流れを確認していきましょう。
養豚農家では、飼育する豚の世話が仕事の中心なので、豚の生活リズムに合わせたスケジュールが組まれます。
また1日の流れは同じですが、飼育スケジュール同様に「繁殖経営」と「肥育経営」で作業内容が少し異なりますよ。
繁殖経営農家
08:00~10:30 分娩確認、給餌
10:30~12:00 母豚の発情鑑定、種付け、豚舎の清掃・消毒
12:00~13:00 休憩
13:00~15:00 子豚のワクチン接種、豚舎の清掃・消毒
15:00~16:00 飼料調達
16:00~17:00 休憩
17:00~19:00 給餌、分娩確認
※お出産や病気・ケガがあった場合は、時間を問わず対応
肥育経営農家
08:00~10:30 豚の状態観察、給餌、豚舎の温度・換気管理
10:30~12:00 豚舎の清掃・消毒、出荷
12:00~13:00 休憩
13:00~15:00 給餌、豚舎の清掃・消毒
15:00~16:00 飼料調達
16:00~17:00 休憩
17:00~19:00 給餌
※病気やケガがあった場合は、時間を問わず対応
繁殖経営農家と肥育経営農家は、肉牛農家と同じく比較的朝は遅め。
繁殖経営農家は、朝一番で分娩のチェックを行います。
豚は夜中から明け方にかけて産気づき、出産をするため、まずは豚舎内をくまなく回って一頭一頭確認するんですね。
その後は豚舎の清掃や管理を中心に、種付けや発情期にある母豚の状態チェックなど、繁殖に必要な作業を行います。
一方の肥育経営農家の仕事は、豚舎の温度・換気管理など、豚が快適に過ごせる環境づくりがメイン。
豚はとてもきれい好きで、繊細な生き物です。
豚舎を清潔に保ってこそ、健康な豚が育ちます。
肥育経営農家は1日かけて、豚の育成に最適な環境を整えるんですね。
養豚農家の仕事内容 メインは衛生管理
1日のスケジュールがわかったら、次は「繁殖経営」「肥育経営」それぞれの主な仕事内容を見ていきましょう。
繁殖経営農家の仕事 種付け・分娩がメイン
母豚の発情サインを逃さず発見し、ストレスの少ない環境を整えるのが、繁殖経営農家の仕事です。
自然繁殖もありますが、養豚業界で主に行われているのは、種付けを行う人工授精。
人工授精には、時間短縮や肉質の均一化、さらに受胎率の向上といった利点があるんです。
ちなみに豚の妊娠期間は114日ほどで、1頭あたりの年間分娩回数は2〜3回。
産まれる子豚の頭数は、1回の出産で平均9.9頭です。
肥育経営農家の仕事 子豚の成育と肥育がメイン
肥育経営農家の主な仕事は、子豚の成育・肥育です。
生後3~10週間は、子豚の育成時期。
生後3週目で平均6kgだった子豚は、11週目で35kg程度にまで成長します。
この時期にあわせて、健康な体を形成するためのワクチン接種を行いますよ。
その後は、快適な環境下で栄養価の高い餌を与え、脂肪をつけさせます。
25週程度の肥育期間を経て、平均118kgの重さで出荷するのが一般的です。
繁殖経営農家・肥育経営農家の仕事 豚舎の清掃や管理が基本
衛生管理 感染症を防ぐ
養豚農家がもっとも力を入れる仕事が、衛生管理です。
外気に触れる出荷時はもちろん、飼養中も定期的に豚舎の清掃・消毒、さらにワクチン接種を行い、感染症や病気に対して細心の注意を払います。
また、生年月日の近い豚をグループにまとめ、移動や出荷時に豚を一斉に移動させる「オールイン・オールアウト」を行う農園もあるんです。
グループ単位で豚を出荷したあと、豚舎を空にして徹底的に洗浄・消毒できるため、感染リスクを大幅に下げられるんですよ。
給餌(きゅうじ) 発育にあわせて4パターンで育成
養豚農家では、哺育期・人工乳期・子豚期・肉豚期とそれぞれの発育段階に合わせ、4パターンの給餌を行います。
生後間もない子豚は、体重6kg前後になる約20日間まで母乳で育て、成長に必要な免疫力や体力を養うんです。
次に消化のいい人工乳を与えて、母豚から離乳させます。
人工乳は子豚育成用の豚舎に移して約50日間、30kg前後になるまで与えますよ。
その後は子豚期用の飼料を与えて約50日間、肉豚期用の飼料を与えて約60日間、出産から数えて約180日間かけて、肉豚として出荷できる状態まで育て上げます。
養豚農家のやりがい・魅力 日本の食卓を支える
養豚には、どんなやりがいや魅力があるのでしょうか。
養豚は動物が相手、という従来の農業とは異なる特徴を持つ業種です。
農家の人たちは養豚にどんな魅力を感じているのか、見ていきましょう。
安定した需要がある 豚肉は食卓に欠かせない食材
食卓に欠かせない食品として、安定した需要のある豚肉。
令和1年の豚肉の消費量は、1人あたり年間約13kgです。(※)
昭和35年の調査開始以来、世代を問わず増え続けています。
今や豚肉は、日本人の食卓になくてはならない食材。
そんな豚肉の生産に携わる養豚農家は、安定した仕事と言えるでしょう。
さらにここ数年はブランド豚の開発が活発化していて、今後ますます需要の向上が見込めるのも養豚農家の魅力です。
早期のスキルアップが可能 短期間で多くの経験を積める
生まれてから出荷までのサイクルが短い養豚は、繰り返しの中でどんどんスキルを向上させられます。
もちろん忙しさもありますが、養豚に必要な作業や感覚を早い段階で得られるため、他の業種に比べ短期間で多くの経験が積めるんです。
日々さまざまな体験をしながら成長できるのも、養豚農家のやりがいのひとつですよ。
豚の成長を間近で見届けられる 愛情をかけた分だけおいしい豚肉に
豚の成長を近くで見られるのは、養豚農家の一番のやりがいでしょう。
とくに繁殖から肥育・出荷まで一貫して行っている農家では、子豚が生まれてからの全過程を間近で見届けられますよ。
仕事のパートナーとして常に一緒にいた分、出荷されるときはとても寂しいですが、愛情たっぷりに育てた豚は、おいしい豚肉になって食べた人を幸せな気持ちにしてくれます。
養豚農家をしていて、これ以上嬉しいことはないでしょう。
養豚農家はこんな人に向いている 豚を大切にできる人は◎
養豚は、動物を相手にする仕事。
豚の健康状態に気を配り、臨機応変に対応しなければいけないケースも多いので、自分が養豚に向いているのか、これから紹介する3項目でチェックしましょう。
- ①豚に愛情を注げる
- ②衛生に気を配れる
- ③些細な変化に気づける
豚に愛情を注げる 感謝の気持ちを忘れない
豚を一番に思いやり、愛情を注げる人こそ養豚農家で活躍できます。
養豚は豚の一生、そして命を扱う仕事です。
親身になって豚に向き合えないと、感謝や愛情が生まれず、養豚の魅力がわからないかもしれません。
豚を可愛がって、一生懸命に世話ができる人は養豚農家に向いていますよ。
衛生に気を配れる 豚はきれい好き
豚はとてもきれい好きな動物です。
排泄物や食べ残し、寝床にカビがあるような管理のできていない豚舎では、すぐに病気になってしまいます。
これでは健康で丈夫な体に成長しないだけでなく、おいしい豚肉も生産できませんね。
なので豚舎は、常にストレスのない環境にしておかなければいけないんです。
豚が生活していて気持ちのいい、居心地のいい豚舎を意識して日々の作業にあたれる人は、養豚家として成功できるでしょう。
些細な変化に気づける 豚の不調は急にくる
日々の生活で些細な変化に気づける人は、養豚農家に向いています。
健康面に気を使った環境下で育てているとはいえ、生きている以上、豚がいつ不調をきたしてもおかしくありません。
食欲が落ちたり、同じ場所から動かなかったり、さらには急に産気づいたり…。
そんないつもと違う小さなサインや変化を感じ取れてこそ、応急処置やお産の準備ができて、豚を守ってあげられるんです。
「なんか変だな」を敏感に察せる人は、養豚農家で活躍できますよ。
養豚のQ&A 女性には適さない?
Q.酪農農家でどんなキャリアが積めますか
A.以下が一般的なキャリア構成です。
STEP1:飼育スタッフ…豚舎の清掃から給餌まで、豚の飼育に必要な知識と技術が身につきます。
また働く農家によっては、繁殖・肥育それぞれの専門的な仕事が学べますよ。
STEP2:現場リーダー…スタッフの管理を行い、責任者とともに養豚農家の経営に携われます。
また第6次産業化が進んでいる農家では、加工や商品開発、マーケティングへの挑戦も可能です。
STEP3:責任者・独立…養豚に関わるすべての業務が身につきます。
また働いている農家の後継者として、豚舎を経営できるケースも多いです。
Q.長期休暇は取れますか
A.取れます。
365日豚の世話をする養豚農家ですが、シフト制にしたり農業派遣者を雇ったりして長期の休暇期間を設ける農家も少なくありません。
Q.女性でも働ける仕事でしょうか
A.可能です。
養豚農家は他の業種に比べ休憩が多く、女性でもムリなく働ける環境が整っています。
また分娩の手伝いをしたり、子豚にミルクを飲ませたりする作業もあるため、子どもを持つ女性や主婦などが活躍する場面も多いです。
Q.未経験でも働けますか
A.働けます。
養豚に限らず、農業業界の多くは人材不足の悩みを抱えています。
やる気さえあれば未経験でも問題ないのはもちろん、歓迎される場合もあるほどですよ。
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