「酪農って何?」
「どんな仕事なの?」
「私にもできるかな?」
酪農に興味をお持ちの方は、こんな風にお考えかもしれません。
酪農とは乳用の牛を飼育し、牛乳を製造すること。
私たちの生活に欠かせない牛乳は、酪農によって生産されているんです。
ただひとくちに酪農といっても、仕事の大半は家畜の世話や牧場の管理。
牛を健康に育て、おいしい牛乳を生産するためのフォローが日々の作業になるため、家畜への愛情を忘れず、些細な変化にも気づけるような人が活躍できる仕事です。
このページでは、酪農の仕事内容や作業スケジュールを詳しくご紹介します。
どんな人が酪農に向いているのかもあわせてお伝えしますので、気になっている方、やってみたい方は、ぜひ参考にしてくださいね。
酪農の生産物例 牛乳を使った加工品の製造も盛ん
冒頭でお伝えしたように、酪農は牛乳を製造すること。
広大な牧場で乳用の牛を飼育し、搾乳した牛乳を市場や食卓へ届けます。
そんな酪農ですが、現在は製造から販売までを一貫して行う第6次産業化が盛ん。
牛乳を原料とするチーズやバター、ヨーグルトを製造・販売する農家も増えているんです。
いまや酪農では、牛乳だけでなく牛乳を使った加工品の製造も、生産物のひとつとなっています。
酪農農家の年間スケジュール 放牧中は牧場管理がメイン
酪農を行う上で不可欠な家畜の餌は、牧場内で生産される場合がほとんどです。
酪農農家は、家畜の世話だけでなく、放牧する敷地や餌となる牧草の管理まで行います。
ここでは牧場の年間スケジュールの一例を基に、酪農農家の仕事を見ていきましょう。
その後、牧場全体に肥料を散布し、牧草の成長を促す農家が多いです。
6月 放牧・牧草収穫1回目:牛たちを牧場に放ち、広大な敷地でのびのびと育てます。
また、冬場に向けて牧草を保存するための収穫も、この時期に行われる場合が多いです。
刈り取った牧草は大きな円柱の形にまとめて「ロール」にしたり、「サイロ」と呼ばれる保管場所に詰めたりして長期保存に備えます。
収穫後は再び肥料を散布し、次回の収穫に向けて牧草の成長を促しますよ。
8~9月 牧草収穫2回目:冬に備え、再び牧草の収穫を行います。
6月の収穫同様、牧草は長期保存に適したサイロに収納されることが多いです。
11~3月 牛舎での飼育:気温が落ちてくる11月ごろにかけて、牛の飼育を放牧から牛舎での管理に切り替えます。
この時期になると牧草は育たないため、牛へはサイロに保管しておいた乾草を与えますよ。
酪農農家の1日の流れ 牛の生活リズムに合わせたスケジューリング
牧場における年間スケジュールがわかったら、次は酪農農家の1日の流れを確認していきましょう。
酪農農家では、飼育する牛の世話が仕事の中心なので、牛の生活リズムに合わせたスケジュールが組まれます。
また牧場での仕事がある時期とない時期で、スケジュールが異なりますよ。
【牧場の作業がある時期】
05:00~08:00 清掃・給餌・哺育・搾乳
08:00~10:00 休憩
10:00〜12:00 牧場整備・ほ場作業
12:00〜15:00 休憩
15:00〜18:00 清掃・給餌・哺育・搾乳
18:00~21:00 休憩
21:00~22:00 牛舎点検
【牧場の作業がない時期】
05:00~10:00 清掃・給餌・哺育・搾乳
10:00~13:00 休憩
13:00〜18:00 清掃・給餌・哺育・搾乳
18:00~21:00 休憩
21:00~22:00 牛舎点検
牛の生活リズムに合わせて作業する酪農農家は、朝が早いです。
起床したらすぐ、牛の体調を確認しながら給餌や牛舎の清掃を行い、搾乳をします。
放牧のある春から夏にかけての期間は、朝のルーティン作業のあとに牧場整備の仕事もあるため、1年の中でもとくに忙しいです。
午後は朝のルーティンと同じく、清掃・給餌・哺育・搾乳を行い、夕方には作業がひと段落します。
そして、就寝前に牛や牛舎に異変がないかをチェックして、1日の作業はすべて完了です。
稲作農家や果樹農家などに比べ、朝が早く体力を必要とする酪農農家は休憩が多め。
昼寝の時間がある農家もあり、ムリなく働けるスケジュールが組まれているのが酪農農家の特徴です。
酪農農家の仕事内容 牛を病気やストレスから守る
1日のスケジュールがわかったら、次は酪農農家の主な仕事内容を見ていきましょう。
搾乳 朝夕2回で病気を防ぐ
牛の乳を搾る「搾乳」は、朝と夕の2回行われるのが一般的。
乳牛は1日でも搾乳しないと、乳量の損失や乳質の低下を引き起こす「乳房炎」にかかりやすくなってしまうんです。
そのため酪農農家では、毎日決まった時間に2回搾乳を行うんですね。
搾乳は、牛を一頭一頭繋いで飼う小規模農場でよく行われている「パイプライン方式」と、中規模以上の農場で多く導入されている「ミルキングパーラー方式」の2種類が主流です。
「パイプライン方式」は、繋ぎ飼いされている牛のもとにミルカーを運び、一頭一頭搾乳する方法。
対して「ミルキングパーラー方式」は、複数の牛を搾乳室に集約して搾乳を行う方法です。
また近年では技術革新により、全自動で搾乳ができる「ロボット搾乳方式」のような最先端の機器を取り入れる農場も増えています。
牛舎管理 牛にストレスを与えない
おいしい牛乳を搾乳するためには、牛たちがストレスなく健康に過ごせる環境作りも重要です。
そのため牛舎の管理や清掃も、酪農農家にとって欠かせない仕事のひとつになります。
牛舎管理で行うのは、主に牛床や飲水時に使用する水槽、さらに子牛部屋の清掃です。
酪農農家では、牛舎の清掃を365日休まずに行いますよ。
給餌 牛たちの健康状態をチェック
牛の健康を考えた給餌も、酪農農家の大切な仕事。
とくに牧草を好んで食べる牛ですが、栄養価を上げるためにトウモロコシや麦などの穀類もバランスよく与える必要があります。
また給餌は、牛の健康状態をチェックするタイミング。
食べ残しが多い牛は病気にかかっている恐れもあるので、ちくいち牛たちを観察しながら給餌を行うのも重要なポイントです。
牧草管理 冬に向け乾草にして保管
酪農農家の多くは牛舎の近くに牧場を所有しており、春から夏の時期に牧草の育成・収穫を行います。
牧草の収穫はトラクターなどの大型機械を使う場合が多く、牧場によっては大型機械の免許取得から操作方法の指導が受けられることもあるんです。
また牧草の管理だけでなく、収穫した牧草をサイロに詰めたり、傷まないよう乾草にしたりして保管するのも、酪農では欠かせない仕事のひとつですよ。
酪農のやりがい・魅力 後継者として牧場主になれるチャンスあり
酪農には、どんなやりがいや魅力があるのでしょうか。
酪農は動物が相手、という従来の農業とは異なる特徴を持つ業種です。
農家の人たちは酪農にどんな魅力を感じているのか、見ていきましょう。
動物が仕事のパートナー 大変な分喜びは大きい
酪農は、人でも植物でも機械でもなく、動物が仕事のパートナーです。
毎日休まず世話を続けなければいけなかったり、思い通りに動いてくれなかったりと、動物が相手だからこそ苦労する点も少なくありません。
ですがその分、毎日新鮮でおいしい牛乳を出してくれたり、可愛い仔牛を産んでくれたりしたときの喜びはひとしお。
動物と共に商品を作れるのは、酪農農家ならではのやりがいです。
移住のサポートが手厚い 住み込みも◎
酪農農家では、早朝の作業や家畜の急な病気・お産にも対応できるよう、農場の近くに寮を併設しているケースが多いです。
そのため、遠方から移住する場合でも、スムーズに生活をスタートできる環境があります。
また住宅の借り上げや住み込みの対応をしてくれる農家もあり、住居代を抑えられるのも酪農農家の魅力です。
牧場主や責任者になれるチャンスがある 後継者募集中の農家が多い
高齢化が進む酪農業界では、後継者候補を募集する農家が増えています。
酪農は、牛舎や搾乳機械といった設備投資が非常に高額で、一からの独立が難しい業種です。
お世話になっている農家がそのまま後継者として雇ってくれる可能性があるのは、酪農農家になりたい人にとって大きなメリットといえます。
また研修や勉強会の開催など、人材育成に力を入れている牧場もあるので、将来の目標に合わせて働く農家を選ぶのもいいでしょう。
酪農はこんな人に向いている 動物好きは絶対条件
酪農は動物を相手にする仕事なので、イレギュラーな対応を迫られる場面は日常茶飯事。
些細な変化に気づき、臨機応変に対応しなければいけないケースも多いので、自分が酪農に向いているのか、これから紹介する3項目でチェックしましょう。
- ①動物の世話が好き
- ②コツコツと根気強く努力ができる
- ③些細な変化に気づける
動物の世話が好き 愛情を持って寄り添える人なら◎
動物の世話が好きな人は、酪農に最適です。
酪農農家では365日、休まず牛の世話を行います。
牛が怖い、排泄物の処理はしたくない、こんな人では酪農の仕事は務まらないでしょう。
愛情を持って牛の人生に寄り添える人こそ、酪農農家で活躍できます。
コツコツと仕事ができる 根気強さが必要
酪農は牛舎の掃除や牧場の管理など、毎日同じルーティンで動く作業が少なくありません。
そんな繰り返しの作業でも、飽きずにコツコツとこなせる人は酪農に向いていると言えるでしょう。
また酪農は動物相手の仕事のため、思った通りにいかないケースも多いです。
何事もあきらめず根気強く努力できる人も、酪農農家では喜ばれますよ。
些細な変化に気づける 不調のサインを見逃さない
物事のちょっとした変化に気づける人も、酪農農家で活躍できます。
乳牛がおいしい牛乳を作るためには、日々健康な状態でいなくてはいけません。
なので、給餌や牛舎点検の際などに、体調の優れない牛が出す変化やサインを逃さず気づける人が求められます。
「ここのところ食欲がないけど、多分大丈夫だろう」
「様子がおかしいけど、報告するのが面倒くさい」
こんな風に、気づいていてもそのままにしてしまう、責任感のない人に酪農は向かないでしょう。
酪農のQ&A 長期休暇は取れない?
Q.酪農農家でどんなキャリアが積めますか
A.以下が一般的なキャリア構成です。
STEP1:飼育スタッフ…牛舎の清掃から搾乳・給餌まで、乳牛の飼育に必要な知識と技術が身につきます。
STEP2:現場リーダー…スタッフの管理を行い、責任者とともに牧場の経営に携われます。
STEP3:責任者・独立…酪農に関わるすべての業務が身につきます。
また働いている農園の後継者として牧場を経営できるケースも多いです。
Q.長期休暇は取れますか
A.取れます。
365日乳牛の世話をする酪農ですが、シフト制にしたり農業派遣者を雇ったりして長期の休暇期間を設ける農家も少なくありません。
Q.女性でも働ける仕事でしょうか
A.可能です。
体力勝負のイメージのある酪農ですが、他の業種に比べ休憩が多く、ムリなく働ける環境が整っています。
また最近では、搾乳を全自動で行う農場も増えているため、今後はますます酪農業界で働く女性が増えるでしょう。
Q.未経験でも働けますか
A.働けます。
酪農に限らず、農業業界は後継者不足から、新たに農業をはじめる人を支援する働きが活発です。
またお伝えしたように、酪農は6次産業化が進んでいるため、営業スキルやマーケティングスキル、さらにはプロモーションスキルといった農業以外の知識や能力が重宝されます。
やる気さえあれば、未経験でもまったく問題ありませんよ。
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