花き(かき)とは、花や草など植物全般の総称。
農業の業種では、切り花や盆栽といった鑑賞用植物の栽培を指します。
花きは一般家庭はもちろん、ホテルや飲食店、さらに冠婚葬祭での実用品として需要があり、他の農家に比べて平均所得が高いのが特徴。
また近年は、生産物の色彩や模様、造形美から、若い世代の転職者も多い人気の業種です。
ただ花き栽培は、生産する作物に応じて栽培技術の使い分けや、成長段階ごとのさまざまな作業が不可欠。
丈夫で美しい植物を栽培するためには、花きについての幅広い知識が必要なんです。
このページでは、花きで生産できる作物や仕事内容、作業スケジュールを詳しくご紹介します。
どんな人が花き農家に向いているのかもあわせてお伝えしますので、興味のある方、やってみたい方は、ぜひ参考にしてくださいね。
花きの生産物例 場所や場面にあわせて多岐にわたる品種を栽培
冒頭でお伝えしたように、花きは鑑賞用の植物を育てること。
栽培した植物は家庭やホテルのロビー、飲食店や美容室、さらに冠婚葬祭などで用いられます。
【花きで人気の生産物】
切り花…キク・バラ・カーネーション
鉢物…シクラメン・ラン
花木…ツツジ・ツバキ・サツキ
球根…チューリップ・ユリ
芝…ノシバ・バミューダグラス・ケンタッキーブルーグラス
地被植物…ササ・クローバー・コケ
花きで人気のある主な生産物は、こちら。
場所や場面にあわせた、さまざまな品種が栽培されています。
花きの年間スケジュール 生産する植物によって大きく作業が異なる
さまざまな品種や作業工程のある、花き。
ここでは、花き農家でよく生産されるキクとチューリップを例に、年間の作業スケジュールをご紹介します。
【キク】
3~4月 定植:露地栽培の場合は、日当たりがよく水はけのいい場所に苗を植えます。
ただキクは降雨による病害が起こりやすいため、雨よけフィルムを用いたり、ハウスを使ったりといった工夫が必要です。
5月 追肥:根が張ったら肥料を与えます。
キクの根張りは、定植から14日前後が目安です。
5~6月 摘芯(てきしん):発育を促すため、余分な芽を取り除きます。
まだ葉が広がっていない先端のやわらかい部分を、転がすようにして取るのがポイント。
摘芯を行えば、1本の苗から4~5本の花が採れるようになります。
6~7月 育成管理:細い枝を取ったり、余分に生えた脇芽を摘んだりして、花の育成に最適な環境を作ります。
7月 支柱入れ:花や葉の重さで枝が垂れ下がったり、折れたりしないように、茎に対して支柱を立てます。
ビニル紐などを使って枝と支柱を固定すると、より強度が増しますよ。
8~9月 収穫:上部の花が6~7分咲き、周囲の花が3~5分咲きになれば収穫時期です。
花を傷めないよう、茎を持ってハサミやカマで切り離します。
【チューリップ】
10~12月 植え付け:「キク」同様に露地栽培の場合は、日当たりがよく水はけのいい場所を選んで球根を植えます。
植えつける際は球根3つ分の植え穴を掘り、その上に球根2つ分の覆土がかかるようにするのがポイントです。
12~3月 水やり・追肥:土の表面が乾かないよう、こまめに水やりをします。
植え付けから1か月経ったら、「緩効性化成肥料」を散布。
緩効性化成肥料とは、水に溶けにくいよう加工された肥料で、効果がバランスよく持続します。
ただ4月以降は、肥料があると球根が腐りやすくなるので、与えないように注意が必要です。
3~5月 収穫:蕾が大きくなったら収穫します。
花が咲いてしまってからでは市場や店頭に並ぶときに鮮度が落ちるため、蕾の時点で摘み取るのがポイントです。
5~6月 球根の保管:チューリップの球根は翌年も利用できるため、葉が黄色く枯れたら掘り起こして保管します。
風通しのいい場所で十分に乾燥させ、丈夫な状態を維持するよう心がけましょう。
花き農家の1日の流れ 午前中に収穫した作物を午後に出荷
年間のおおまかなスケジュールがわかったら、次は花き農家の1日の流れを確認していきましょう。
花き農家では、収穫・出荷がある時期とない時期でスケジュールが大きく異なります。
それぞれを、詳しく見ていきましょう。
【収穫・出荷がない時期】
08:00〜09:00 起床・出勤
09:00〜12:00 農作業
12:00〜13:00 休憩
13:00〜17:00 農作業
17:00〜18:00 記録、退勤
【収穫・出荷がある時期】
07:00〜08:00 起床・出勤
08:00〜12:00 収穫
12:00〜13:00 休憩
13:00〜18:00 選果・出荷
18:00〜19:00 記録、売上管理、退勤
花き農家にとっての繁忙期は、収穫・出荷がある時期です。
花きの収穫は、午前中の涼しい時間帯に行われるのが一般的。
午後からは植物に虫食いや変色がなく、販売できる状態にあるかをチェックする「選果」を行って出荷されます。
このように収穫・出荷がある時期は、通常のルーティンは行わず、出荷に向けた作業だけをする農家が多いです。
花き農家の仕事内容 品種改良も不可欠な作業
1日のスケジュールがわかったら、次は花き農家の主な仕事内容を詳しく見ていきましょう。
土づくり 植物が健康に育つ土壌を整備
花き栽培の下準備として、苗や球根を植える約2週間前から土づくりをはじめます。
土を耕したり石灰や腐葉土、肥料を加えたりして、健康な土壌を整備しますよ。
水やり・温室の管理 変化に気を配りこまめに対応
花き栽培の基本となる水やりは、品種や生育段階に応じて水量・水圧を調節します。
湿度や温度にも気を配り、ハウス内の気温管理や天窓の開閉をこまめに行いましょう。
植え替え 植物の成長を促す
花きでは、苗の成長にあわせて大きなポットや鉢に植え替えを行います。
植物の成長を阻害しないよう、タイミングを見計らって丁寧に行うのがポイントです。
出荷作業 手に取ってもらう工夫も必要
花きを切り花として出荷する場合は、余分な葉やつぼみを取り除く工程が必要です。
また店先で手にとってもらうキッカケづくりとして、包装した植物にオリジナルのラベルをつける作業もあります。
品種改良 今後は花きの必須作業に
花き農家では、複数の品種を交配させて、色や形、生産過程での課題を克服する新しい品種を生み出しています。
市場のニーズに応じた品種改良も、今後の花き農家における仕事のひとつと言えるでしょう。
花き農家のやりがい・魅力 植物を通して思い出作りをサポート
花き栽培には、どんなやりがいや魅力があるのでしょうか。
花き栽培は品種改良が活発に行われていて、従来の農業とは異なる特徴を持つ業種です。
農家の人たちは花き栽培にどんな魅力を感じているのか、見ていきましょう。
色鮮やかな職場 花に囲まれて仕事ができる
花き農家のメリットは、毎日たくさんの花に囲まれて仕事ができるところでしょう。
キレイなバラやキクの花など、色鮮やかな空間で作業ができるんです。
咲き誇った花たちに癒されながらの仕事は、オフィスワークでは味わえない花き農家ならではの魅力です。
人の気持ちに寄り添える 雰囲気づくりのお手伝い
花きで栽培された植物は、冠婚葬祭をはじめとする、さまざまな場面で活用されます。
結婚式なら人を笑顔にできたり、葬式なら葬儀を華やかに彩れたりするでしょう。
栽培した植物を通じて、雰囲気や感動をつくるお手伝いができるのも花き農家のやりがいのひとつです。
品種改良が盛ん 理想の植物が作れる
農業業界の中でも、とくに品種改良が盛んな花き。
栽培方法やノウハウが身につけば、思い描く理想の植物を作り出せる環境が整備されています。
「七色のグラデーションが鮮やかなチューリップを作りたい!」
「もっともっと大きな花が咲くバラができないかな」
こんな思いが形になりやすいのも、花きならではの魅力と言えるでしょう。
花き農家はこんな人に向いている 繊細で丁寧な作業が求められる
花き農家では、栽培方法の異なるさまざまな品種を同時に育てるケースも少なくありません。
仕事の順序立てや気配りができない人には務まらない作業もあるので、自分が花き農家に向いているのか、これから紹介する3項目でチェックしましょう。
- ①あれこれ気を配れる
- ②丁寧な仕事ができる
- ③研究心が強い
あれこれ気を配れる 植物や環境の変化に気づければ◎
花き農家では、同時期に異なる品種を栽培するケースもしばしば。
また栽培方法も露地栽培だったり、施設栽培だったりとさまざまです。
そのため花き農家で働く以上、あれこれと気を配り、栽培する品種や環境にあわせた対応が不可欠になります。
植物や環境の変化に気づける目や感覚を持った人は、花き農家で活躍できるでしょう。
丁寧な仕事ができる 雑な仕事が作物の価値を下げる
花きによって栽培される作物は、繊細な植物ばかり。
とくにバラやカーネーションといった切り花は、傷や汚れがつきやすく、収穫時のちょっとしたミスで価値が大きく下がってしまいます。
植物を傷めないために、花き農家では丁寧な仕事が求められるんです。
花の部分を掴んで収穫したり、大雑把に摘芯を済ませたりする人には、花き栽培は向かないと言えます。
研究心が強い 自発的に問題解決に向けて動ける
前項でも伝えたように、花きでは品種改良が活発に行われています。
見た目の変化だけでなく、栽培の効率化も改良のテーマになっていて、花き農家では品種改良も仕事のひとつになるでしょう。
そんな花き農家では、どうすればよりよい品種ができるのか、常に考えて農作業や研究に励める人が求められます。
積極的に自分の意見を伝えられたり、自発的に改良の研究ができたりするような人は重宝されますよ。
花きのQ&A 女性が働きやすいって本当?
Q.花き農家でどんなキャリアが積めますか
A.以下が一般的なキャリア構成です。
STEP1:栽培スタッフ…さまざまな品種の栽培技術が身につきます。
STEP2:現場リーダー・農場長…ハウスを含めた農場全体の管理、また責任者や専門家とともに品種改良に挑戦できます。
STEP3:責任者・独立…花き農家に関わるすべての業務が身につきます。
また独立して自分の花き農場をはじめる人も多いです。
Q.長期休暇は取れますか
A.可能です。
1年を通してさまざまな異なる品種を栽培する農家もありますが、ひとつの作物を収穫して、次の作物の栽培に取り掛かるまでの期間を休暇にあてる場合がほとんどです。
なかには、2か月間休業する農家もありますよ。
Q.女性でも働ける仕事でしょうか
A.できます。
とくに収穫において、丁寧で繊細な仕事が求められる花き農家では、たくさんの女性が活躍中です。
また他の業種と比べて比較的小さな土地で栽培する花きは、広大な畑を行き来するような作業もないため、体力面に不安のある方でも働きやすいですよ。
Q.未経験でも働けますか
A.働けます。
花きは農業業界のなかでも、とくに若者の転職者が多い業種。
しかも、転職者はまったくの農業未経験者というケースが大半です。
やる気さえあれば、未経験でも問題ありません。
もしいきなり農家に就職するのが不安な方は、数時間単位で働けて花き栽培のノウハウを学べるアルバイトからはじめるのがオススメです。
当サイトジモベジワークスでは、1日単位の花き農家の求人もご紹介しているので、ぜひ確認してみてくださいね。