養鶏とは、卵や鶏肉を生産するために鶏を飼育すること。
私たちが普段口にする卵や鶏肉は、養鶏農家によって生産されているんです。
養鶏農家の仕事は、卵を生産するための鶏を飼育する「採卵用養鶏」と、食肉用の鶏を飼育する「食肉用養鶏」によって異なります。
それぞれの養鶏農家の仕事があってこそ、新鮮でおいしい卵や鶏肉が食卓に届くのです。
このページでは「採卵用養鶏」と「食肉用養鶏」、それぞれの養鶏農家の仕事内容や作業スケジュールを詳しくご紹介します。
どんな人が養鶏農家に向いているのかもあわせてお伝えしますので、興味のある方、やってみたい方は、ぜひ参考にしてくださいね。
養鶏の生産物例 卵用と食肉用で飼育する鶏が異なる
冒頭でお伝えしたように、養鶏は卵や鶏肉の生産を目的として鶏を飼育すること。
「採卵用養鶏」と「食肉用養鶏」の農家によって、鶏卵や鶏肉が生産されています。
【鶏卵】
採卵用として飼育される鶏は、採卵に特化した品種改良をされた「ジュリアライト」や「ボリスブラウン」が一般的。
卵を産む、雌のみ飼育されるのが特徴です。
また採卵を終えた採卵鶏は、加工食品やチキンスープのだし、ペットフードや家畜用の肥料に利用されます。
【鶏肉】
食肉用鶏の大多数は、ブロイラーと称される限られた特定の品種です。
食肉用鶏は他の生産者と差別化するのが難しい商品であるため、牛肉や豚肉と異なり、品種でのブランド化はほとんど行われていません。
ブロイラーは、鶏肉やフライドチキン、チキンサラダとしてスーパーやレストラン、食卓に届きます。
養鶏農家の育成スケジュール 鶏にあわせて年中無休でお仕事
養鶏の育成スケジュールは、「採卵用養鶏」と「食肉用養鶏」で異なります。
養鶏農家は鶏の世話をする仕事なので、基本的には年中無休。
休日は交代制で、スタッフ間で順番に取得する場合が多いですよ。
養鶏農家の働き方は、鶏の育成サイクルに大きく関わります。
「採卵用」「食肉用」別に、養鶏のおおまかな育成スケジュールを確認してみましょう。
【採卵用養鶏】
卵を産む雌の雛は、産まれてすぐ育雛(いくすう)用のケージで飼育されます。
その後、産卵の始まる120日齢ごろに、採卵用の成鶏ケージに移動させるのが一般的。
産卵のピークは210日齢ごろと言われていて、鶏が産める卵は1日1個です。
また採卵用の鶏は、食肉用の鶏に比べて過密な群飼をする場合がほとんど。
群飼だと、雛同士のつつき合いで傷を負う鶏も少なくないため、産まれてから5日齢ごろにクチバシを切断する農家が多いです。
【食肉用養鶏】
食用鶏は、まず約21日間のふ化期間を経て、雛まで育てます。
その後、小型の鶏はおよそ50日間、大型の鶏はおよそ60日間の育雛期間を経て出荷。
小型の鶏は2kg前後、大型の鶏は2.5kg前後で出荷されるほか、フライドチキン用として1.7kg前後で出荷される鶏もいますよ。
さらに、日本の在来種の血を半分以上継いでいる、名古屋コーチンや比内地鶏などの地鶏は、ふ化してから75日以上、なかには150日間じっくりと育てた後に出荷されるケースもあるんです。
また出荷に際しては、1週間前から薬を含まない飼料を与えるよう法律で義務付けられています。
養鶏農家の1日の流れ 採卵用養鶏農家は早朝からの仕事あり
飼育スケジュールがわかったら、次は養鶏農家の1日の流れを確認していきましょう。
養鶏農家では肉牛や養豚と違い、農家ごとの生活スタイルに合わせたスケジュールが組まれます。
また1日の流れは同じですが、飼育スケジュールと同様に「採卵用養鶏」と「食肉用養鶏」で作業内容が異なりますよ。
【採卵用養鶏】
05:00~12:00 給餌・集卵・鶏舎清掃
12:00~13:00 休憩
13:00~16:00 選別・出荷
16:00~17:00 鶏舎の見回り・鶏の健康管理
【食肉用養鶏】
08:00~12:00 給餌・鶏舎清掃・雛の受け入れ
12:00~13:00 休憩
13:00~17:00 鶏舎の見回り・鶏の健康管理・ケージ移動
採卵用養鶏農家は、集卵作業があるため開始時間が早め。
鶏は早朝に卵を産むので、朝一番で鶏舎全体の卵を集めます。
その後は給餌や清掃作業を行い、午後からは朝に集めた卵が商品として問題ないかを見極める「選別」をしたあと、出荷をするのが通常の流れです。
一方、食肉用養鶏農家の仕事は、給餌や清掃といった鶏と鶏舎の管理がメイン。
雛の受け入れや、成鶏のケージ移動といった作業が入る場合もありますが、基本的には朝8時から管理業務を行い、夕方5時には鶏舎の見回りをして終業となりますよ。
ただ鶏同士がつつきあって体に傷がつき、鶏肉としての価値が損なわれないよう、鶏の観察や鶏舎管理を徹底して行う必要があります。
集卵作業がない分、採卵用養鶏農家より業務時間は短いですが、神経を使う仕事が多いのは覚えておきたいポイントです。
養鶏農家の仕事内容 管理を徹底して鶏にストレスを与えない
1日のスケジュールがわかったら、次は「採卵用養鶏農家」「食肉用養鶏農家」それぞれの主な仕事内容を見ていきましょう。
採卵用養鶏農家の仕事 集卵がメイン
採卵用養鶏農家の主な仕事は、集卵と卵の出荷です。
採卵養鶏では早朝に産卵が集中するため、卵同士や鶏がぶつかって傷がつかないうちに、卵を集める必要があります。
基本的には一つひとつ手作業で集卵しますが、最近では自動的に卵を回収するベルトコンベアーを導入する農家も増え、徐々に効率化が進みつつありますよ。
集卵したら、卵の洗浄を行い、大きさや品質を測る「GPセンター」に出荷します。
鶏舎内にGPセンターを備えている農家もありますが、ほとんどは回収した卵をていねいにエッグトレーに入れて、夕方までに出荷できる準備を整えますよ。
食肉用養鶏農家の仕事 出荷前の飼料に注意
食肉用養鶏農家の主な仕事は、出荷を見越した鶏と鶏舎の管理です。
鶏の雛は、寒いと部屋の隅にギュッと集まって圧死したり、逆に暑いと蒸れて死んでしまったりするケースがあります。
そのため常に鶏舎の室温に気を配り、雛にストレスを与えない環境を作ることが重要な仕事になるんです。
また出荷1週間前の鶏には、抗菌剤や抗生物質を含まない飼料を与えるよう義務付けられています。
成鶏の出荷時期を見越して休薬飼料に切り替えるのも、食肉用養鶏農家の大切な仕事のひとつです。
採卵用養鶏・食肉用養鶏に共通する仕事 鶏舎の清掃や管理が基本
飼養管理 健康な卵や鶏肉を生産できる鶏にする
養鶏農家の主な仕事のひとつが、鶏の飼養管理です。
まず雛を迎えたら、スプレーや飲水、点眼などでワクチンを接種し、ウイルスへの抗体をつける作業を行います。
出荷までの期間は、給餌や清掃、温度・湿度・照明管理などを行いながら飼養しますよ。
また鶏舎での鶏は、木くずやワラなどでできた敷料の上で育てます。
湿った敷料はすぐに取り除いて、常に乾燥した寝床を保ってあげるのも大切な仕事です。
衛生管理 快適に過ごせる環境を提供する
衛生管理も、養鶏農家の基本的な仕事です。
鶏は、温度や環境にとても敏感な生き物。
餌の食べこぼしや排泄物がたまった状態では、すぐに体調を崩してしまいます。
常に鶏舎に気を配り、鶏が快適に過ごせる状態を作り、管理するのも重要な作業ですよ。
養鶏農家のやりがい・魅力 需要は農業業界NO.1
養鶏には、どんなやりがいや魅力があるのでしょうか。
養鶏は動物が相手となり、従来の農業とは異なる特徴を持つ業種です。
養鶏農家の人たちは養鶏にどんな魅力を感じているのか、見ていきましょう。
職業としての需要が高い 安定した収入が見込める
栄養価が高く、比較的安価で購入できる鶏卵や鶏肉は、今や私たちの食卓に欠かせない食材です。
鶏肉の消費量は、ここ5年ほど連続して増加中。
令和1年の鶏肉の消費量は、1人あたり年間約14kgと豚肉を上回り、食肉のなかでもっとも高い数値になっています。(※)
また鶏卵についても、同様の傾向が見られますよ。
鶏卵や鶏肉の生産に携わる養鶏農家は、安定した収入が見込める需要の高い仕事と言えるでしょう。
独自のブランド卵が開発できる 高値がつく可能性大
近年、ブランド卵への注目度が高まっている日本。
多くの養鶏農家が開発を行っていて、独自のブランド卵を作りやすい環境が整いつつあります。
『黄身が真っ赤』『味がとにかく濃い』など、オリジナリティあふれる卵を開発できれば、高値がつく可能性も大きいですよ。
雇用条件や福利厚生◎の農家が多い 未経験でも就農しやすい
1農家あたりの飼養頭数が、畜産業界トップの養鶏農家。
経営の安定した農家が多く、他の業種に比べて雇用条件や福利厚生が充実しています。
また養鶏業界は、鶏舎の機械化が顕著。
作業環境が整っているぶん、仕事上のストレスを軽減できます。
未経験でも就農しやすい環境があるのは、大きな魅力です。
養鶏農家はこんな人に向いている 責任感を持って鶏の世話ができれば◎
養鶏は、動物である鶏を相手にする仕事。
鶏を一番に考えてお世話できてこその仕事なので、自分が養鶏家に向いているのか、これから紹介する3項目でチェックしましょう。
- ①動物を大切にできる
- ②責任感が強い
- ③コツコツと仕事ができる
動物を大切にできる 匂いや汚れを気にしない人は◎
動物を大切にできる人は、養鶏に最適です。
養鶏農家では365日、休まず鶏の世話を行います。
毎日鶏を一番に考え、寄り添ってこそ、養鶏の仕事が務まりますよ。
また養鶏場では何百、多いところでは何千の鶏を飼育しているため、独特の匂いがあったり作業で汚れたりする場面も少なくありません。
「臭いから鶏舎にいたくない」
「服が汚れるのはイヤだな…」
こんな人では、養鶏の仕事は続かないでしょう。
責任感が強い 鶏舎に細かく気を配れる
養鶏では鶏の世話と同じくらい、鶏舎の管理が重要な仕事です。
温度や湿度、照明のほか、敷料の管理をおろそかにした場合、環境の変化に敏感な鶏はすぐに弱ってしまいます。
これでは栄養のある卵や、鮮度のいい鶏肉は生産できません。
常に鶏舎に気を配れる責任感の強さも、養鶏に不可欠な要素と言えます。
地道に仕事ができる あきらめない粘り強さも必要
養鶏農家は鶏舎の掃除や給餌など、基本的には毎日同じルーティンで働きます。
そんな繰り返しの作業でも、嫌にならず地道にこなせる人は養鶏に向いていると言えるでしょう。
また養鶏は生きた動物が相手の仕事ですから、餌を食べてくれなかったり暴れたりと思い通りにいかない場面は日常茶飯事です。
何事もあきらめず粘り強く努力できる人も、養鶏農家では活躍できますよ。
養鶏のQ&A 女性でも働きやすいって本当?
Q.養鶏農家でどんなキャリアが積めますか
A.以下が一般的なキャリア構成です。
STEP1:飼育スタッフ…鶏舎の清掃から給餌まで、鶏の飼育に必要な知識と技術が身につきます。
STEP2:現場リーダー…スタッフの管理を行い、責任者とともに養鶏農家の経営に携われます。
また農家によっては、ブランド卵の開発に参加することも可能です。
STEP3:責任者・独立…養鶏に関わるすべての業務が身につきます。
また働いている農家の後継者として、鶏舎を経営できるケースも多いです。
Q.長期休暇は取れますか
A.取れます。
365日鶏の世話をする養鶏農家ですが、交代制にしたり農業派遣者を雇ったりして長期の休暇期間を設ける農家も少なくありません。
Q.女性でも働ける仕事でしょうか
A.もちろん、働けます。
広大な農場を利用する肉牛農家と異なり、養鶏農家は鶏舎での作業がメインです。
体力面に不安のある女性の方でも安心して働ける環境ですし、実際に作業している人の半分が女性、なんていう農家もありますよ。
Q.未経験でも働けますか
A.働けます。
養鶏に限らず、農業業界では後継者を募集している農家が多いです。
やる気さえあれば未経験でも問題ないのはもちろん、歓迎される場合もあるほどですよ。
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