農業法人とは、個人ではなく、組織として農業を営んでいる会社の総称。
農業法人に就職して農業に従事することは、「雇用就農」と呼ばれています。

雇用就農は、正社員として働けるため、安定した給与や福利厚生があるのが魅力。
ワークライフバランスがとりやすく、近年農業法人に就職する方が増えているんです。

ただ、ふだん農業に関わりのない人にとって、農業法人へ就職するハードルは高め。
農家の実情や就職方法など、わからないことだらけで困っている方もいるかもしれません。

そこでこの記事では、農業法人の就職状況や就職する方法、仕事内容などを解説!
農業法人に興味のある方は必見の内容ですので、ぜひ最後までお付き合いくださいね。

農業法人に就職するなら今がチャンス?


田んぼの前にあるビニールハウス

農業法人に就職する方なら、そもそも就職できるのか?が気になっているはず。
結論からお伝えすると、農業法人の求人数は増加していて就職しやすい状況です。

まずは農業の就職状況と有効求人倍率から、雇用就農の現状を確認してみましょう。

農業の就職状況


新規就農者数の推移グラフ(2009年~2019年)

※単位:人
※引用:令和元年新規就農者調査結果┃農林水産省


こちらは、2009年から2019年までの新規就農者数の推移をグラフにした表。
ちなみに新規就農者は、就農形態によって下記の3種類に分類されます。

  • 新規参入者:土地や資金を自己調達して独立した農業者
  • 新規雇用就農者:農業法人に雇用された農業者
  • 新規自営農業就農者:家業として農業を継いだ農家

ご覧いただいたとおり、新規就農者全体の人数はやや減少傾向にあります。
2019年の新規就農者数は5万5870人で、そのうち49歳以下は1万8540人。
10年前の2009年と比べると、約1万人ほど新規就農者が減っていますね。

ただ雇用就農者や新規参入者は、ここ10年で少しずつ増加しています。
また実は、雇用就農者数の割合は、10年間で1.6倍まで拡大しているんです!

雇用就農者が増えているのは、農業法人が積極的に人材を雇用しているから。
高齢化で個人農家が減っている一方、経営規模を拡大する農業法人が増えています。
農業法人への就職を考えている方にとって、いまはチャンスの時期といえるでしょう。

農業の有効求人倍率


農林漁業の有効求人倍率グラフ(2013年~2020年)


農業法人の雇用増加にともなって、農業求人の掲載数も増えています
こちらは、農林漁業分野と全産業の有効求人倍率を比較したグラフです。

有効求人倍率とは、ハローワークに掲載された求人数を求職者数で割った数値。
簡単にいうと、「求職者1人に対して何件の求人があるか」をあらわす指標です。

グラフをみると、農林漁業の有効求人倍率は全産業の平均を常に上回っています。
他の産業より人材が不足していて、求職者にとって就職しやすい状態なんですよ。

また農林漁業の求人は、学歴・年齢・経験を問わないお仕事が多いのもポイントです。
農業大学を卒業した新卒の方はもちろん、中卒・高卒の方も積極的に採用されています。
年齢不問の求人も多いため、30~40代から50~60代のシニア層まで活躍できる可能性大!
未経験から正社員になれる求人も豊富ですし、興味があるならぜひ挑戦してくださいね。

農業法人に就職する方法は?求人探しが一番肝心


田んぼの前でスマートフォンを操作する女性

農業法人に就職するのに最適なタイミングなのはわかったものの…。
実際のところ、どうやって農業法人に就職するの?なんて方もいるかもしれません。

農業法人に就職する方法は、一般的な企業に就職する方法とほぼ同じ

1.農業法人の求人を探す
2.農業法人の求人に応募する
3.農業法人の選考を受ける
4.内定をもらった農業法人に就職

農業法人の求人に応募して選考を受け、内定をもらった会社に就職します。

ただ農業法人の場合、最初の求人探しでつまづいてしまう人が多いんです。
なぜなら一般の求人サイトでは、農業系の求人がほとんど掲載されていないから。
農業法人に就職したいなら、求人を探す方法をおさえておくとスムーズですよ。

ここからは、農業法人の求人を探す方法を具体的にお伝えしていきます。

農業就職に特化した求人サイト

農業法人の求人を探すなら、農業就職に特化した求人サイトが一番です。
全国の農業求人を掲載していて、雇用形態や業種、エリアなどから求人検索が可能。
「寮・社宅完備」や「スマート農業」など、こだわり条件からもお仕事を探せます。

また、農業法人だけでなく、個人農家や関連会社の求人も掲載されているのも◎。
さまざまな求人をチェックすることで、農業に就職するイメージを掴みやすいですよ。

なかには、就農アドバイザーが転職活動をサポートしてくれるサイトもあります。
農業への就職が初めての方にとって、就農アドバイザーは心強い存在になるでしょう。
オススメの農業求人情報サイトをまとめておくので、ぜひ一度ご覧になってくださいね。

農業系の就職イベント

「まずは農業について情報収集したい」「農業法人の人とお話してみたい」
こんな風にお考えの方は、農業系の就職イベントに参加してみるのもオススメ。

就農イベントは、東京や大阪などの大都市を中心に毎年開催されています。
参加無料で入退場自由のイベントが多いため、気軽に情報を得られるのが◎。
各公式サイトで日程が掲載されるので、予約をとって会場に向かいましょう。

農業に特化した合同企業説明会や就職相談会なら、農業法人の方と直接話せます。
ご自身の状況や思いを相談できるので、より具体的なアドバイスをもらえますよ。

国や地方自治体の就農相談センター

日本では、農林水産省を中心に、国や地方自治体が就農相談センターを開設しています。

就農相談センターでは、農業をはじめたい方に向けたお役立ち情報を提供。
農業求人だけでなく、農業体験や研修、就農支援の情報などを掲載しています。
農業に就職を考えているのであれば、一度目を通しておいて損はありませんよ。

全国新規就農相談センター「農業をはじめる.JP

農協(JA)

農協(JA)とは、日本全国の農家を守るために組織された協同組合です。
農作物の販売や農具の購入、営農指導など、農業にまつわる業務をサポート。

もちろん、農業の就職支援も行っていて、各地域の求人を紹介しています。
雇用形態や期間、業種などを選んで、さまざまな形で農業に携われるのが魅力。
全国各地のJAグループの求人が掲載されているので、ぜひ確認してみてください。

ハローワーク

ハローワークは、厚生労働省(国)が運営する総合的な雇用サービス
職業紹介はもちろん、雇用保険や就職対策などを行ってくれる公的機関です。

ハローワークには、一般的なお仕事だけでなく、農林漁業関係の求人も豊富
ネット上で求人を確認したり、窓口に相談したりして求人探しに役立てましょう。

農業法人以外で農家に就職するには?


ビニールハウスの前で記念撮影をする農業一家

実は農業法人以外にも、農家として就職する方法は存在します。
農業に就職したいなら、他の方法も視野に入れておきましょう。

  • 農家として独立
  • 農家の後を継ぐ

それぞれの就職方法について、詳しく解説していきます。

農家として独立

1つ目の方法は、土地や資金を自分で調達して、農家として独立・起業すること。
いわゆる「新規参入者」と呼ばれ、雇用就農と並んで近年増えている働き方です。

自分が経営者になるため、栽培する作物や販売方法を自由に決められるのがメリット。
「起業ビジネスで成功したい」「農業で儲けたい」など、野心のある方に向いています。

ただし、独立資金や土地、農具などは、すべて自分で用意しなければなりません。
また栽培技術やノウハウも自分で学ぶため、事前準備を周到にしておく必要があります。

新規就農者向けの研修や助成金があるので、独立を考えている方は活用した方がベター。
もしくは一度農業法人に就職して準備をすすめ、将来的な独立を目指すのもオススメです。

農家の後を継ぐ

家族や親類が農業を営んでいるのであれば、農家として後を継ぐのも方法の1つです。
家業として農業を継いだ農家は、「新規自営農業就農者」という形態に分類されます。

新規自営農業就農者は、農地や農具、作物をそのまま引き継げるのが最大の魅力。
初期費用がおさえられるのはもちろん、栽培技術や販路の獲得もスムーズに叶います。

もし知り合いに農家がいない場合は、後継者のいない農家さんを探してみましょう。
「第三者継承」として、国や都道府県で移譲を希望する農家さんを紹介しています。

また地方に移住したり農業体験をしたりするなかで、農家さんと知り合う方も多いです。
仲良くなった農家さんの事業を受け継いだ方もいるので、地道に人脈を広げましょう。

農業に就職した人の声


一面に広がる茶畑

続いては、実際に農業法人に就職した方の体験談をご紹介します。
苦労したこと・楽しかったことなど、就農者のリアルな感想を確認しましょう。

脱サラしてゼロからものづくりに携われる農家へ就職(30歳・男性)

前職はサラリーマンでしたが、ゼロからものづくりに携わりたいと考え農業法人へ就職
正社員として週6~7日、ネギの収穫や運搬、トラクターによる耕耘などを行っています。

もともとデスクワーク中心だったので体力は心配でしたが、なんとかこなせている状態。
腰痛や気温差など大変なことも多いけど、覚悟のうえで就農したので嫌ではありません。

農業に就職して一番感動したのは、自分の育てたお客さんに直接販売したとき
ゼロから農作物を育てていくなかで責任感も芽生え、毎日充実した生活を送っています。
いまは雇用就農ですが、いつかは自分の畑をもって独立し、一生農家を続けていきたいです。

農業の技術やノウハウを次の世代につなげたい(25歳・女性)

大学と大学院で作物や地域環境について学び、農業に興味を抱くようになりました。
卒業後、一般企業に就職するイメージがつかず、そのまま地域の就農相談センターへ。
紹介していただいた農家さんのもとで、研修もかねてアルバイトとして働いています。

就職先の農家さんは70歳と高齢ですが、まだまだ現役。
栽培技術やノウハウはもちろん、販売の方法までみっちり教えてくれています。
実際の農作業は想像以上に大変だけど、作物に触れ合う日々はすごく楽しい!
農家さんから学んだことを自分の糧にして、次の世代につなげていきたいです。

家事や育児と両立できる農業の仕事に挑戦(46歳・女性)

一番下の子どもが小学生なので、時間や融通のきく就職先を探していました。
ママ友の紹介でいまの農業法人と出会い、パートとして週5日出勤しています。

以前は商社でOLをしていたので、農業のお仕事はわからないことだらけ…。
最初は大変でしたが、他のパートさんと作業するうちにだんだん慣れてきました。
何より、子どもの急な休みに対応できたり、家事と両立しやすかったりするのが魅力。
子どもの手が離れたら、正社員として本格的に農業に携わるのもいいなぁと考えてます。

就職前に知っておきたい農業法人の基礎知識


花木の様子をみる青年農家

農業法人に就職する前に、農業法人の実態について理解しておきましょう。

どんな仕事内容なのか、収入はどれくらいか、メリット・デメリットは何なのか…。
事前にリサーチしておけば、就職する前後のギャップが少なく安心して働けます
農業法人についてしっかり学んで、実際に働くイメージを膨らませてくださいね。

農業法人の仕事内容

農業法人といえども、お仕事の中心は農作物の栽培・管理です。
土作りや作付け、農作物の手入れ、収穫、出荷など、一連の農作業を任されます。
年間を通して農作業をするなかで、作物の栽培方法やノウハウが学べるんですよ。

また、就職先の農業法人によっては、専門的なお仕事を任されることも。

  • 販路を拡大するための営業
  • 販売戦略を考えるマーケティング
  • 農作物を宣伝するPR

など、過去の経歴や得意分野を活かして働ける可能性もありますよ。

農業法人の収入

平均初任給(月給)
201417万5158円~24万9041円
201518万2420円~25万8903円
201618万8549円~26万4008円
201719万3413円~28万2921円
201819万7128円~28万8487円
引用:農業の収入は?初任給は?┃農業ジョブ


こちらは、農業求人情報サイト「農業ジョブ」が調査した農業法人の平均初任給。
農業ジョブに掲載されている全業種・全職種・全地域の求人から抽出した数字です。

2014年は17~25万円でしたが、2018年には19~29万円まで金額が上がっています
大卒の初任給が22万円前後なので、農業法人のお給料はそこまで低くありませんね。

また農業法人では、一般的な会社と同じように、ボーナスや昇給があります。
農業法人の業績や経営方針によって金額が変わるので、就職前に確認しましょう。

くわえて近年農地法の改正によって、大手企業が農業ビジネスに参入してきています。
大企業のグループ会社や子会社であれば、よりよいお給料や待遇が叶うかもしれません。

農業法人のメリット・デメリット

メリットデメリット
安定したお給料をもらえる
土地や農具の準備が必要ない
福利厚生が整備されている
働きながら農業の勉強ができる
作業内容を選べない
経営の自由度が低い

農業法人のメリットは、なんといっても安定したお給料をもらえること。
土地や農具も会社が保有しているので、準備する手間や費用がかかりません。

また、農業法人では、福利厚生が整備されているのも嬉しいポイント。

  • 寮・社宅完備
  • 社用車の導入
  • 有給休暇の取得
  • 残業代や出張手当

など、暮らしに直結する待遇が多く、地方移住やIターンの就職先としてもオススメです。

さらに農業法人であれば、働きながら農業の技術や知識を身に着けられます
ゼロから農業をはじめる独立農家と比べると、負担が少なくて済むんですよ。

対する農業法人のデメリットは、作業内容や農業経営の自由度が低いこと。
あくまで会社員なので、育てる作物や経営方針は会社に従わなければなりません。
メリット・デメリットを理解したうえで、農業法人に就職するか判断してください。

農業法人の就職で失敗しない3つのコツ


苗木を手にもつ女性農家

農業に就職してから「こんなはずじゃなかった…」なんて後悔したくないですよね。

農業法人に就職する前に、農業への熱意や適性をしっかり見極めておくのが重要です。
農業法人の就職で失敗しない3つのコツをご紹介するので、ぜひ試してみてください!

農業をはじめたいと感じた理由を深堀りする

まず実践してほしいのが、「農業をはじめたいと感じた理由を深掘りする」こと。
なぜ農業に興味をもったのか?なぜ仕事にしたいのか?自己分析してみてください。

  • 農作物を育ててみたい
  • 作った野菜で誰かに喜んでもらいたい
  • 安全な国産の食料を日本に供給したい

など、心の底から農業に魅力を感じて、好奇心が生まれた方は問題ないでしょう。
反対に注意してほしいのが、農業をはじめる理由が消極的かつネガティブなケース。

  • 都会での生活に疲れたから
  • コミュニケーションをとるのが苦手だから
  • 組織や時間に縛られず働きたかったから

こんな風に消去法で農業を選んでいる方は、仕事として長続きしないかもしれません

農業は自然相手の仕事ですが、農家や農協、地方自治体との連携が不可欠です。
コミュニケーション能力が求められるので、理想とのギャップに苦しむ可能性大。
また農家は、農作物のリズムにあわせて働くぶん、意外と自由な時間はとれません。
収穫時期は休みなく働きますし、長期休暇をとって旅行に行くのも難しい環境です。

実際に、安易な理由で農業に就職して、後悔している方も少なくないんです。
農業の就職を成功させるためにも、理由を深掘りして自分の熱意を確認しましょう。

農家に向いている人の特徴と照らし合わせる

向いている人向いていない人
自然や生物が好き
植物を育てるのが好き
健康で体を動かすのが得意
地道な作業が苦ではない
視野が広く、観察眼がある
自然や生物に苦手意識がある
植物の栽培に魅力を感じない
体が弱く激しい運動ができない
細かい変化に気付けない

農業就職で失敗しないためには、事前に農家への向き・不向きを確認しておくのも重要。
農家に向いている人・向いていない人の特徴と、自身の性質を照らし合わせてみましょう。

農家に向いているのは、自然や生物、植物を育てるのが好きな人
野菜や果物を栽培して生計を立てる農家として、最低限必要な素質です。

自然を相手に働く農業は、悠々自適に野菜を育てながら、田舎暮らしを楽しめると思われがち。
ですが実際は、天候や気温、病害虫などの脅威にさらされながら、毎日作物と向き合うんです。

土を耕して種を植え、日々水や肥料をあげて、大きく育った農作物を収穫して出荷する…。
こんな風に地道な作業を繰り返すのはもちろん、作物の些細な変化に対応する力も必要。

自然や作物への愛情はもちろん、体力や根気、観察力のない方に農家はつとまりませんよ。

農業体験をして就職の本気度を確かめる

農業法人に就職する前に、一度農作業を体験しておくのも大切です。

実は、新規就農者が離農する理由でもっとも多いのは「業務内容が想定と違っていた」から。
イメージだけで農業に就職して、理想と現実のギャップを埋められない方が少なくないんです。
事前に農業体験をすることで、農業に就職するイメージがグッと現実味を帯びてきます。
また本当に農業に従事したいのか、農家に向いているのか判断する手助けにもなりますよ。

  • 農業インターンシップ
  • 農業研修
  • 農業セミナー
  • 研修バスツアー
  • 農業アルバイト

など、農業を手軽に体験する方法はたくさんあります。

なかでもオススメなのが、単発の農業アルバイトで農業体験すること。
1日~数日単位で働けるので、さまざまな地域や農作業を経験できます。
しかも、お金を稼ぎながら農業の勉強ができるから、効率もバッチリです。

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全国の農家さんの求人を掲載しているので、好きな地域や作業を選んで気軽に働けます。
お試し感覚で農業を体験できますし、就農を考えている方はぜひ活用してくださいね。

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田んぼのあぜ道で空を見上げる農家夫婦

最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。
農業法人の就職状況や就職する方法、失敗しないコツなどをご紹介しました。

農業法人に限らず、就職活動には不安や疑問がつきものですよね。

「農業法人に就職するのって難しいかなぁ」
「そもそも農業に向いてなかったらどうしよう…」
「農業に就職してから後悔するのは絶対にイヤ!」

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農業の適性と熱意を見極めるのはもちろん、新規就農の土地や作物探しにもオススメ。
また、実際に就職活動をする際に、農業バイトの経験があると優遇されやすいですよ。

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